昨今ではGHG排出量の削減が喫緊の課題となっています。今回は、そのGHG排出量の削減に係る知識についてわかりやすく説明していきます。
GHGとは?
そもそも、GHGとは何なのでしょう。二酸化炭素と異なる物なのでしょうか?
GHG(Green House Gases:温室効果ガス)とは、大気中で温室効果を引き起こすガスのことを指します。
これらのガスは地球の表面に向かって放射される太陽光の一部を吸収し、再放射することによって大気中の熱を保持し、地球の温度を上昇させる効果があります。
そのためGHG排出量は、二酸化炭素(CO2)を含む温室効果ガスの全体的な排出量を指し、二酸化炭素排出量は、二酸化炭素だけの排出量を指します。
GHG排出量の削減のためには、二酸化炭素の削減だけでなく、他の温室効果ガスの排出量削減にも取り組むことが求められます。
企業がGHG排出量を算定するメリットは?
企業のGHG(温室効果ガス)排出量の算定には、以下のメリットがあります。
1、環境への責任と企業イメージの向上
GHG排出量の算定と報告は、企業が環境への責任を果たし、持続可能性に取り組んでいることを示す重要な手段です。
これにより、企業の環境への取り組みが透明化され、顧客からの信頼を得ることができます。
2、法規制や規制遵守への準備
多くの国や地域で、GHG排出量の計測や報告が法的な要件となっています。
排出量を正確に算定することは、企業が法規制や規制に適合し、法的義務を果たすための基礎となります。
また、将来的により厳格な規制が導入される可能性も考慮し、早めにGHG排出量の算定を行うことは重要です。
3、コスト削減と効率の向上
GHG排出量の算定は、企業が自身のエネルギー使用や生産プロセスを評価することに繋がります。
これにより、排出量の大きい箇所や改善の余地がある箇所を特定し、効率化や削減策を導入することができます。
エネルギー効率の向上や再生可能エネルギーの導入など、削減策の実施によって収益性の向上が期待できます。
4、投資へのアピールとリスク管理
GHG排出量の算定と報告は、投資家や金融機関からの注目を集める重要な要素です。
持続可能性への取り組みや低炭素経済への適応能力は、企業の投資価値や長期的な成長のポテンシャルに影響を与える場合があります。
また、気候変動や関連するリスクへの対策として、GHG排出量の算定と報告はリスク管理の一環としても重要です。
これらのメリットに加えて、GHG排出量の算定は企業の持続可能な未来へのコミットメントを示すものとなり、グリーンビジネスや市場競争力の向上にも寄与することが期待されます。
GHGプロトコルとは
それでは、よく聞くGHGプロトコルとは何なのでしょう。
GHGプロトコルは、企業や組織が温室効果ガス(GHG)排出量を計測・報告し、管理するための国際的な基準と手法の枠組みです。
1997年に制定された後、GHG排出量の計測・報告・管理に関する標準的なガイドラインとして世界的に広く受け入れられるようになりました。
GHGプロトコルでは、サプライチェーンで発生する温室効果ガスを、以下の図のように大まかに分割して算定することが行われています。
スコープ1のGHG排出量、スコープ2のGHG排出量、スコープ3のGHG排出量を足し合わせたものがその企業・組織のサプライチェーンにおけるGHG排出量となります。
まとめ
日本では2020年10月に菅元総理が所信表明演説において「2050年までにGHGの排出を実質ゼロにする」ことを宣言しました。それに先立ち2021年4月には、2030年度までに2013年度比マイナス46%を目標としています。
その目標の達成のために、企業には自社のGHG排出量の可視化、そしてそれに基づいた課題分析・施策の実施が求められています。
次回からは、各スコープ・各カテゴリーごとにGHG排出量の算定方法や削減のコツ等について取り上げていきます。